難病対策の変遷

一般に難病とは「治らないあるいは治り難い病気」との意味ですが、わが国の難病対策は諸外国とは全く異なる歴史を辿って現在に至っています。即ち、昭和40年代に社会的に大きな衝撃を与えたスモン(SMON; subacute myelo-optico-neuropathy)の原因が、厚生省研究班による全国疫学調査により解明されたことをきっかけとして、昭和47年に難病対策要綱が策定され「難病」に対する行政的な取り組みが開始されました。具体的には1)医療施設の整備、2)調査研究の推進、3)医療費自己負担の解消、の3つの柱が策定され、特に、2)の研究費助成による調査・研究を行う難治性疾患克服研究事業と、3)その一部の疾患の医療費助成を行う特定疾患治療研究事業が整備されました。

一般に難病は原因不明のため治療薬の開発が困難なことに加えて、患者数が少なく市場が限定的なため、製薬企業が新薬開発に取り組むのが困難な環境にあります。その意味で、国が主体となって包括的な取り組みを行うわが国の難病対策は、世界でも例のない極めて特色ある行政的事業で、難病の病因解明と新規治療法の開発に大きく寄与して来たといえます。

しかしながら、1)調査研究が未実施の疾患数が極めて多いこと、2)医療費助成の有無に関して「不公平感」がある事、3)調査研究と医療費助成制度の安定した財源がない事、などの課題が浮き彫りとなり、対策の抜本的な見直しが必要になりました。

その結果、平成27年に新難病医療法「難病の患者に対する医療等に関する法律」が法制化され、医療費補助対象となる指定難病の拡充と消費税収入などをその財源とすることが決定され、難病対策は新たな段階を迎えているといえます。

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